歯周病がやばい!
ぐらぐらになってはじめた歯科医院探し
04 ファーストオピニオンを求めて
―医師による診断を知る―

 歯がおかしくなって5日目、待ちに待った診察の日が訪れた。依然として痛みにさいなまれ、睡眠中に目が覚めることもしばしばある。すぐにでも処置してもらいたかったが、医師による診断だけ聞いて治療はしないと心に誓い、歯科医院に赴いた。

 ファーストオピニオンを得るために訪れた最初の歯科医院では、見るものすべてに驚いた。十数年来通っていた歯科医院が、昭和時代さながらであったことに気づかされる。まさに浦島太郎状態であった。

 まず、びっくりしたのはレントゲン。歯科用CT(コンピュータ断層撮影)が導入されており、一回の撮影で撮影機が顔の周囲を180度旋回し、撮影が終わると瞬時にすべての歯のパノラマ画像がモニタに映し出された。

 これまでの歯科医院は、小さなフィルムを口の中に入れて撮影するタイプのレントゲンだった。そのため、問題を訴えた歯をピンポイントでしか撮影したことがない。はじめてのパノラマ画像を前に息を飲んだ。

 パノラマ画像を眺めながら、医師は歯周病が全体的に進行していることを指摘する。なかでも痛みのあるぐらぐらの歯はかなり進行しているという。診断が確定した瞬間である。予想通りの診断に、慌てることはなかった。しかし、問題の指摘はそれだけにとどまらない。

 画像の見方を解説しながら、別の個所の親知らずとその手前の奥歯の間に虫歯があることにも言及する。これには動揺した。確かに歯と歯の間にあるようで、これまでの歯科医院では痛みを訴えない限り、見つけられそうになかった。ちなみに痛みはない。

 画像診断を終え、視診に入る。問題を指摘した歯を中心に、全体を診ているようだった。一通り終え、治療方針が告げられる。痛みを伴っているぐらぐらの歯は抜歯、さもなくば応急処置として削る、そして虫歯になっている親知らずも抜歯するとのことだった。

 準備していた通り、削ることも抜歯することも拒んだ。治療に入らないのだから、医師による診察はこれで終わった。治療しないと決めていなければ、医師が勧めるままに削る選択をしていたかもしれない。あとは、歯科衛生士に引き継がれた。歯周ポケットの測定である。

 パノラマ画像が一瞬にして歯を支える骨の状況を映し出したことを反映するかのように、歯周ポケットは深かった。歯肉内が炎症しているからか、測定にはかなりの痛みも伴う。測定が終わり、口をゆすぐと、うがい台が血に染まった。

 この年になるまで、歯周ポケットを測定したことがなかった。歯科衛生士から測定結果の説明を受け、はじめて歯科衛生士の役割を理解した。これまでの歯科医院では、歯科衛生士さえいなかったのだ。隔世の感を抱いたのは、こんなところにもある。

 歯科衛生士という職業があることは知っていた。しかし、若くてきれいな女性の歯科衛生士が多い歯科医院を選ぶという行為が、どうにもナンパに思えて、無意識のうちに医師の腕一本で治療する歯科医院を選んでいたようだ。よこしまな考えで恥ずかしく思う。

 歯科治療への理解不足は、歯周病の早期発見が遅れた原因の一つであることに疑いない。とはいえ、歯科診療は保険診療と自費診療が混淆しているだけに、歯科衛生士を含めスタッフが多いほど、自費診療に依存しているのではないか、と勘繰っていたこともある。

 歯科衛生士による処置の最後は、ブラッシング指導だった。どのくらいぶりだろうか。下手したら、小学校ぶりのような気もする。これまで触ったこともなかった歯間ブラシの使い方も教わる。何もかもが新鮮だった。

 診療の最後に、医師から1か月後の再診を告げられた。次回までに虫歯がある親知らずの抜歯を決断するという宿題も課せられる。痛くてぐらぐらする歯の治療に触れない上、次は1か月後?、とも思ったが、ファーストオピニオンを得るという当初の目的は達成できた。

 受付で会計を済ませると、次の予約を迫られる。そもそも、得られたファーストオピニオンをもとに別の歯科医院と比較する計画だったので、この歯科医院で治療を開始することはまったくの白紙だった。だから、予約は入れたくなかった。

 躊躇していると、予約を入れることを強く促してくる。さすがに1か月後の予定がすべて埋まっていることはなかったので、押しに負けて適当に予約を入れた。予約は、次の歯科医院が不発だったときの保険と思い、自らを納得させる。

 歯科医院を出て時計に目をやると、初体験づくしの診療は2時間弱にも及んでいた。こんなに長い時間、歯科医院に滞在したこともはじめてである。これまでは待ち時間も含めて、長くてもせいぜい1時間だった。

 帰途につく道すがら、頭の中では今日の診療内容を反芻していた。治療を進めるに値する歯科医院であるのかに至っては、考えてもよくわからなかった。はっきりしているのは、1か月後まで悠長に待っていられるほど、歯の状態はよくないということである。(つづく

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歯周病がやばい!ぐらぐらになってはじめた歯科医院探し

<目次>

01 プロローグ―歯科医院探しに求めたもの―
02 歯科医院を選ぶ難しさ―病因、病名、病状がわからない―
03 決め手に欠いた最初の歯科医院選び―公式サイト、口コミサイトからの消去法―
04 ファーストオピニオンを求めて―医師による診断を知る―
05 ファーストオピニオンからの収穫―最初の受診で学んだこと―
06 迷走する第二の歯科医院選び―決め手のなさに、ぶれる選択基準―
07 丁寧な第二の歯科医院―隠れ家レストランならぬ、隠れ家歯科医院―
08 第二の歯科医院への揺らぎ―あまりにも突然すぎた自費診療宣告―
09 そして、振り出しへ―考えさせられたかかりつけ歯科医院としての見きわめ―
10 再三の歯科医院選び―無意識に行っていた根拠のない選択からの脱却―
11 かかりつけ歯科医院との出会い?―自らの選択への覚悟―
12 エピローグ―歯周病治療から見えてくる現代日本人を取り巻くネット環境と医療制度の問題点―

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